平成18年度行徳地区市民防犯のつどい「防犯講演」要旨


日時: 2006(平成18)年8月8日(火)午後6時30分
場所: 行徳文化ホールI&I


当日の講師は、特定非営利活動法人(NPO)日本ガーディアン・エンジェルスの千葉支部長、宮嵜大樹(みやざき・だいき)氏。出席した自治会/町内会の代表や防犯指導員を対象として、防犯パトロールの重要性と効果について約1時間講演した。 講演の要旨はつぎのとおり。

●ガーディアン・エンジェルス(以下「GA」)の目標は二つある。ひとつは、いまより良い社会をつぎの世代につなげようということ。もうひとつは、自分だけよければ良いというかんがえを否定する“Dare to Care”(見て見ぬふりをしない)。

●GAの2大活動としては、防犯パトロールと安全教育がある。防犯パトロールで大事なことは、まず街で姿をみせるということ。GAのトレードマークは赤いベレー帽に白いTシャツというめだつユニフォームだが、この存在自体に犯罪の抑止効果がある。また、こどもたちの連れ去り対策として護身術をおしえるというのは逆効果。不審者に会ったときに何ができるか、たとえば「前えならえ」以上の距離をおくとか、あぶないと感じたら逃げる、すぐに助けをもとめるといった、こども自身でできることをおしえることが必要だ。

●地域安全活動のポイントは、個人のちからと、その集合体としての地域のちからの二つを、いかにバランス良く高めるかという点にある。地域のちからを高めるためには、指導者がどう地域を率いていくかも重要となる。国内における自主防犯活動への参加状況と犯罪発生状況(認知件数)を比較するとつぎのとおり。
  平成15年: 3000団体・17万人 → 認知件数279万件
  平成16年: 8000団体・52万人 → 同265万件
  平成17年: 20,000団体・120万人 → 同227万件

●パトロールをすればするほど犯罪は減る。ただし、パトロールの目的を勘ちがいしてはいけない。犯罪者をつかまえるのはプロがやるしごとであって、パトロールの目的は犯罪を抑止することにある。財団法人都市防犯研究センターのデータによると、空き巣犯が侵入をやめた理由として多いのは、「声をかけられた」(63%)、「補助錠がついていた」(34%)、「セキュリティシステムがあった」「イヌを飼っていた」(ともに約30%)となっている。いちばん効果が高い「声かけ」こそ、地域のちからでできることではないだろうか。

●江戸川区では、葛西周辺で空き巣の被害が多く、かつては区内の空き巣発生件数が全国ワースト・ワンだった。これに対し、地元のボランティアによるパトロールを強化するほか、警察や行政も一体となって青灯パトロールカーで巡回したりセキュリティグッズの導入をよびかけたりした結果、空き巣は周辺の他地域へ逃げていった。警視庁犯罪発生マップをみると、かつては真っ赤(犯罪の発生密度が高い)だった江戸川区周辺が、いまは減少を示す青色に変わっている。もっとも、この影響で最近行徳で空き巣が増えているのかもしれない。

●各地域のボランティア活動も多くの課題をかかえている。ひとつはパトロールを継続するむずかしさ。パトロール中は何もないのがあたりまえなので、だんだんつまらなくなってひとが出てこなくなる。もうひとつは高齢者が多いこと。GAには若いメンバーが多いが、それでも平均年齢は29歳くらいでかろうじて20歳代を保っているのが現状。こうした課題の解決策として、限られた時間を有効につかうための目標を決めるのが良い。たとえば、「こどもの安全」や「ひったくり」などを目標にするのなら、その目標に合わせた時間や場所を選ぶ。参加者一人ひとりが個人的に目標をもつことも大事。たとえば、「きょうは50人に声をかけよう」とか「ゴミひろいを中心にやろう」など。

●効果的なパトロールのための四つのサイクルはつぎのとおり。
  1.問題点を一人ひとりが共有(たとえば、ゴミが多い)
     ↓
  2.対策案を練る(ゴミばこを作ろう)
     ↓
  3.実行する(ゴミばこを作って置いてみる)
     ↓
  4.検証する(効果はあったか、つぎの目標はらくがきにしよう、など)

●リーダーのしごとは、自分ひとりでがんばることではなく、ほかのメンバーからの声をいかに引きだすかということ。たとえば、いろいろなアイデアを出そうというとき、ひとりでは10のアイデアしか出せないかもしれないが、20人がそれぞれ10のアイデアを出せば200のアイデアが生まれる。同様に、個人のちからだけではできないことも、地域のちからにすればできる。さらに、行政や学校や保護者など多くのひとが連携すれば、100%に近いことができるかもしれない。

(協力: ガーデナヴィル市川妙典自治会)